今回は大般若会に関するコラム3回目ということで、仏具を紹介したいと思います。
①華皿(はなざら)・洒水(しゃすい)・柄香炉(えごうろ)
前回のコラムでは、大般若会の流れを説明しました。
その中で冒頭の「浄道場」はその場を浄めるために堂内を三人の僧侶が練り歩くとお話しました。
写真にある仏具が実際にその僧侶たちが持つ仏具で、右から順番に柄香炉、洒水、そして華皿です。
柄香炉には炭が入っており、手で香炉を持ちながら焼香して堂内をめぐります。
焼香には浄めの効果があると信じられているからです。
不思議な形をしたこの柄香炉ですが、バランスが悪いので、慣れないと片手で持つのが意外と大変です。
次に洒水は器の中に水が入っています。
その水は場を浄める水であり、それを洒水枝(しゃすいし)と呼ばれるもので本堂内に水を撒いていきます。
洒水枝には松の葉が使用されており、毎年境内の松から作成しています。
なお、この洒水はご葬儀やお墓・位牌の開眼法要でも行われたりします。
最後に華皿ですが文字通り華が載せられた皿です。
ただ、本物の花ではなく、仏菩薩の絵が描かれた散華(さんげ)というものが載せられています。
蓮の花びらの形で出来ています。
これを周りに散らすように配ることで仏の世界観を表現しています。
お寺での参列が叶えば、この散華を拾って持って帰ることもできるので、コロナが落ち着いたら是非ご参列して拾ってみてください。
②太鼓
次にご紹介するのが、この法要ならではの仏具、太鼓です。
最初の『般若心経』と『観音経』、そして『消災呪』において太鼓が叩かれます。
実はこの大般若会でしか使用することがないもので、一年に一度だけ登場します。
普段の法要では木魚を使ってリズムをとるのですが、大般若会ではご祈祷ということでこの太鼓が使用されます。
その音はまさに圧巻で、心の奥底から呼び覚ますような不思議な力を持っているような気がします。
残念ながらリズム感がない私自身はあまり叩くことができません。
時々練習をしてはみるのですが、まだまだです。
いつか披露できるよう精進したいと思っています。
また祈祷太鼓などと言われるそのリズムは様々な流派があるそうで、お寺によっても全然変わります。
YouTubeでも色々な祈祷太鼓の映像が上がっているので、ご興味ある方は聴き比べてみてはいかがでしょうか?
(山形県鶴岡にある修行道場、善宝寺の祈祷太鼓)
③導師が使用する仏具
大般若会では、本堂の真ん中に導師が坐る赤い礼盤(らいばん)という台が設けられます。
その上には坐禅をするための坐蒲が置かれており、この上で坐禅をしたまま導師がご祈祷します。
法要中、導師は手の形を変え、鈴を鳴らし、あるいは真言(しんごん、呪文のこと)を唱えます。
これは元々真言宗の教え(空海)などが影響した作法で、導師が仏の手の形(手印)を作りながら仏の言葉である真言を唱え、そして心も仏として念じることで、大きな功徳を得られると信じられているのです。
つまり、自らの身と口と意を仏と一体させるのが、導師なのです。
そして、導師の前にある赤いフクサが掛けられた経台には2つの経典が置かれています。
左側が『大般若経』の最後六百巻目で、転読最後に導師が行うためです。
右側が『理趣分(りしゅぶん)』と呼ばれる大きな経典です。
実は理趣分は『大般若経』の五七八巻目で、六百巻中最も重要で功徳のある巻とされています。
そのため、他の経巻はパラパラと転読されるのみである一方、この『理趣分』だけは導師自らが法要中最初から読んでいきます。
そして理趣分を読み終わったあと、同じく転読して終えます。
とても厚みのある『理趣分』を転読すると、パラパラと音がなり、同時に風が起きます。
これを「般若の風」と呼ぶのですが、この風を身に受けるとその年は無病息災になると信じられています。
残念ながら今年は皆さんに会場に集まりいただくことは叶いませんが、画面越しに少しでも「般若の風」を感じ取ってもらえたら幸いです。
以上、三回にわたって大般若会についてお話してきました。
いよいよ本日14時から大般若会となります。
この連載を読んで、少しでも興味を持って視聴してもらえればと思い、書きました。
これ以外でも気になることがあれば、どしどし質問をお寄せください。
それではライブ配信でお待ちしております!
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